自宅を売却した年の配偶者控除は要注意!|知らないではすまされない年末調整・確定申告の知識
年末調整や確定申告で配偶者控除をうける人は多いと思います。
自宅を売却すると、年末調整や確定申告で配偶者控除をうけることができない可能性があります。
私が税理士事務所で実際に遭遇した事例をもとに解説します。
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配偶者控除とは
配偶者を扶養することで税金が安くなる制度です。
安くなる税金は納税者本人の所得に応じた税率で異なります。
年間400万の給与収入があり所得税率10%、住民税率10%の場合、配偶者控除をうけることで約76,000円の税金が安くなります。
配偶者控除をうけるための条件
配偶者控除をうけるためには条件があります。
主な条件は次のとおりです。
- 納税者本人の合計所得金額が1000万円以下
- 配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下(2020年分以降は48万円以下)
2は元々あった条件ですが、1は2018年から追加された条件です。
2017年までは配偶者控除をうけるのに納税者本人の所得に関する条件はありませんでした。
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配偶者控除に納税者本人の所得に関する条件が追加されたことの影響
2018年から配偶者控除をうけるために納税者本人の所得に関する条件が追加されました。
これにより2017年まで配偶者控除をうけることができた人が配偶者控除をうけることができなくなりました。
年収1000万超の外車の営業マン
私の知り合いに外車の営業マンがいて給与年収1300万くらい稼いでいました。
奥さんはパート収入が100万ありました。
給与年収1300万は給与所得に換算すると1080万となり「納税者本人の合計所得金額が1000万円以下」の条件から外れてしまいます。
配偶者控除をうけることができなくなり、2017年までは払う必要のなかった16万円の税金を2018年以降は払うことになったのです。
なぜ自宅を売却すると配偶者控除がうけられなくなる可能性があるのか?
給与年収1300万稼いでいる人だけでなくても配偶者控除をうけることができなくなる可能性があります。
それは自宅を売却した場合です。
自宅を売却すると「売却代金から取得価格と売却費用を差し引いた金額」が譲渡所得になります。
この譲渡所得の計算をするときに、取得価格が分からないケースが多々あります。
取得価格が分からない場合は、売却代金の5%を取得価格にみなすことができます。
(例)自宅の売却代金が2500万、売却費用が10万、取得価格が分からない場合
2,500万-(2,500万×5%+10万)=2,365万
2,365万が譲渡所得となり、最大39%、最低14%の税金がかかります。
最低14%だとしても約330万もの税金がかかります。
それはあんまりだということで自宅を売却する場合は、譲渡所得から3000万円を引いて計算できる特例があります。
2,365万から3,000万円を引くと0を下回るので、税金も0です。
税金は0になるのですが「合計所得金額」を計算する際の譲渡所得は2,365万のままです。
そのため、配偶者控除の「納税者本人の合計所得金額が1000万円以下」の条件から外れてしまい、配偶者控除をうけることができなくなるのです。
マイホームを手放して地方移住をした老夫婦
私が確定申告の担当をしたお客様の中にマイホームを手放して関東から地方移住した老夫婦がいました。
2018年は、マイホームの売却のほか、公的年金、相続で取得した土地(5人の共有名義)の売却といった収入がありました。
マイホームの売却に関する所得は1500万、公的年金の所得は80万、相続で取得した土地の売却の所得は200万でした。
この場合、納税者本人の合計所得金額は1780万円となります。
2017年までであれば納税者本人の所得に関する条件がなかったので配偶者控除をうけることができました。
2018年から追加された「納税者本人の合計所得金額が1000万円以下」の条件から外れてしまい、配偶者控除をうけることができませんでした。
2017年までであれば払わなくてよかった税金57、000円を配偶者控除の条件が変わったことにより払うことになってしまいました。
自宅を売却したときは年末調整で配偶者控除を申告してよいか注意しましょう
このように給与収入1300万なくても、配偶者控除をうけられない可能性があります。
都会で就職しマンションを購入したけれど、マンションを売却し地方移住し転職した私のような人間も注意が必要です。
自宅を売却し取得価格が分からず譲渡所得が1000万円を超える可能性がある場合は、職場で行う年末調整で配偶者控除の申告をしないように気を付けましょう。
後日、配偶者控除がうけられないことが発覚し、配偶者控除が取り消された場合、返金が発生する可能性があります。
自宅取得に関する書類は大事に保管おきましょう。
配偶者控除だけに限らず、有利になることがあるからです。
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