社会保険労務士と言えば、保険や年金、労務管理のプロフェッショナルです。
就業規則の作成・労働基準監督署への提出代行と言えば、社会保険労務士が力を入れている分野の一つと言えるでしょう。
しかし、社会保険労務士が作成してはいけない就業規則があるのです。
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船員さんの就業規則は船員法が作成根拠
船員さんの労働環境は特殊なため、労働基準法で定める労働時間などの労働条件では対応できません。
船員さんの労働時間などの労働条件は、船員法で特別に定められているのです。
そのため、船員さんの就業規則は労働基準法ではなく船員法のルールに従って作成しなければいけません。
社会保険労務士の業務範囲
社会保険労務士の業務範囲は、社会保険労務士第二条で次のように定められています。
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等( 略 )を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
条文に登場する「別表第一」で社会保険労務士が扱うことができる法令が56列挙されていますが、この56の法令の中に船員法は含まれていません。
では、船員法を取り扱うことができるのは何者か?
それは、海の社会保険労務士と言われている海事代理士になります。
海事代理士の業務範囲
海事代理士の業務範囲は、海事代理士法第一条で次のように定められています。
第一条 海事代理士は、他人の委託により、別表第一に定める行政機関に対し、別表第二に定める法令の規定に基づく申請、届出、登記その他の手続をし、及びこれらの手続に関し書類( 略 )の作成をすることを業とする。
条文に登場する「別表第二」で海事代理士が扱うことができる法令が15列挙されています。
別表第二 (第一条関係)
( 略 )
三 船員法(昭和二十二年法律第百号)
( 略 )
海事代理士法第十七条で、海事代理士でなければ船員法に関する書類作成を禁止しています。
第十七条 海事代理士でない者は、他人の委託により、業として第一条に規定する行為を行つてはならない。但し、他の法令に別段の定がある場合は、この限りでない。
ただし、ほかの法律で認められていたら禁止しません。と例外を認めています。
しかし、社会保険労務士法では社会保険労務士が船員法の取り扱いができると定められていないので、社会保険労務士が船員法に関する書類作成をすることはできません。
他人から頼まれて行ってはいけないので、たとえ無料であってもダメということになります。
以上のことから、社会保険労務士が他人から頼まれて船員さんの就業規則を作成することや代わりに提出することはできないことは、たとえタダであってもできないことになります。
就業規則とは
就業規則といえば会社が定めるルールブックです。
勤務時間や給与などの労働条件、労働者が守らないといけないルールとルールを守らなかったときのペナルティなどを記します。
10名以上の労働者を雇っている会社は、就業規則を作って労働基準監督署に提出しなければいけません。
労働基準法
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
社会保険労務士は会社の依頼をうけて就業規則を作成し、労働基準監督署に提出することができるのです。
社会保険労務士が作成してはいけない就業規則
しかし、社会保険労務士が作成してはいけない就業規則があるのです。
それは船員法で定める船員さんに関する就業規則です。
船員の職場は船の上です。
船で働く場合、陸上で働く場合を労働環境が全く違います。
船を降りるまで職場から離れることができないです。
そこで船員さんの勤務時間や給与などの労働条件を決める就業規則は、船員法で定めるように決められているのです。
船員法
第九十七条 常時十人以上の船員を使用する船舶所有者は、国土交通省令の定めるところにより、次の事項について就業規則を作成し、これを国土交通大臣に届け出なければならない。これを変更したときも同様とする。
労働基準法と船員法の関係
船員さんのことは全て船員法に従って決められているかと言うとそうではありません。
労働基準法にも従っています。
労働基準法
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
どんな職業でも雇われていて給料をもらっていれば労働者には違いありません。
しかし、船員の労働環境は特殊です。
労働基準法では「4週間で4日休みを与えなさい」となっていますが、船員さんは船に乗ったら1か月以上乗りっぱなしということもあるので4週間で4日休みを与えることが物理的に不可能となるのです。
そこで労働基準法と船員法それぞれに船員は労働基準法の一部が適用されないと定められているのです。
労働基準法
第百十六条 第一条から第十一条まで、次項、第百十七条から第百十九条まで及び第百二十一条の規定を除き、この法律は、船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条第一項に規定する船員については、適用しない。
船員法
第六条 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第一条から第十一条まで、第百十六条第二項、第百十七条から第百十九条まで及び第百二十一条の規定は、船員の労働関係についても適用があるものとする。
船員さんにも関係ある労働基準法のルールの例
(均等待遇)(強制労働の禁止)(公民権行使の保障)など
これらのルールを破ったときに課される罰則
人間が尊厳をもって働くための基本中の基本となるルールは労働基準法で決められているということです。
また船員さんが投票しやすいような投票ルールも労働基準法の(公民権行使の保障)に従い定められています。
船員さんは船員法のルールに従うもの
(労働時間)(災害補償)(就業規則)(監督機関)
船員さんの特殊な労働条件のため、特別ルールが定められています。
また、船員法の監督機関は国土交通省になります。
▼ コチラもご参考に